超面接

○×クレジットカード
四月三日(木)
 第一次面接
 形式:超面接
 持ち物:筆記用具

 超面接だあ!?なんだそれ。きいたことねーよ。
 もしや、超ド級の圧迫面接か?
 ふん、あたしをなめんなよ。
 三月に最初の面接があってから、はや一月。落ちた会社は数知れず。
 圧迫面接も多数経験済み。
 もうなんだっておかまいなし。
 通るか、落ちるか。そんなのは相手の勝手だからね。
 あたしは思う存分しゃべるだけ。
 超面接。
 かかってらっしゃい。
 ふふふ、腕がなるわね。

「児島紀菜さん。お入りください」

 おら、来たぜ。
 テーブル越しに三つ並んだオヤジ顔。
 ヒゲとさわやかえくぼと岸部四郎似。
 あたしはかろやかに進み出て、イスにひらりと座る。うふん。
 おすまし顔で、「失礼シマス」「ヨロシクお願いしマス」「コジマキナと申しマス」
「キナ?変わった名前だねえ」
 さわやかえくぼさん、もっと微笑んで。可愛いわ。
 さて、なんて答えようかしら?
 ハイ。小学校でよく「こいつはきなくせえ」とかいってイジメられまシタ。
 ……ってそんなこといわねーよ!!
「クラスに同じ名前の人がいたことがないのが自慢です」
「あ、そう」
 気のないヒゲおじさん。
 きっと家では「その山男みたいなヒゲやめてよ!!似合ってないんだから」って家族に嫌がられているんだわ。

「早速ですが、本日の面接について説明いたします」
 岸部四郎似がコホンと咳払いする。「実は、私たち三人の中に、○×クレジットの社員は一人しかいません。後の二人はダミーです。児島さん、本物をあててください。制限時間は十分。その間、自由に私どもに質問なさって、答えを導いてください」

 ……なんだそれ!?あたしの志望動機や自己PRはいらねーのかよ。
 これが超面接なのか?

「では、始めます。どうぞ」
 うわあ。やるしかないのね。
 と、とりあえず名前と所属部署でも聞いてみるか。
「え〜、まず、簡単に自己紹介をお願いいたします。岸部四郎さんからどうぞ」
 やけくそだ。
「あは、よく似てるって言われるんですよ。でも、田中正則っていう名前なんです。全然関係ないでしょ。現在入社十八年目、審査部門で働いています」
 岸部マサノリ、審査部門、と。
「では次の方どうぞ」
「加納孝、入社九年目です。営業推進部です。店の門を『たたけ、たたけ!!』がモットーです」
 ……たたけ、たたけ?明日のジョー?
 さわやかえくぼめ、何かたくらんでるのかしら。
「はい、次の方」
「高島三郎、二十二年目、ヒゲ部……ひでぶ」
 ひ、ひでぶ!?今度は北斗の拳ですか?
 た、助けて〜。面接でだじゃれだよ、このヒゲおっさん。しかもヒゲ部なんてねーだろーが!
「志望動機をお聞かせください。田中さんから順番に」
「うーん、昔のことだから忘れちゃったなあ」
「アニメや漫画をタイアップしたカードが作りたかったんです」
「ここしか内定もらえなかったから」
 はい、皆さんありがとう。涙がでるよ、まったく。
「では現在の仕事でやりがいを感じる瞬間を教えてください。今度は高島さんから」
「え、ええ〜!?急に反対から指すなんてナシだろ」
 そんなん日常茶飯事よ。はやく答えろ〜。
「んーとね、クレームつけてきた相手をうまくまるめこんだとき。してやったり、だ」
「僕は新規加盟店の契約がとれたときですね」
「ブラックリスト眺めているときが至福のときです。次はこいつが破産するのかな〜って、思いながら」
 駄目だ。さわやか加納しかまともに答えてくれない。
 わっかんねー。
「逆に辛いときはありますか?」
「言い忘れたけど、国際事業部なんだよ、私。おかげで海外出張ばかりで、家庭を顧みない夫になってしまっていることだね。皆には散々不細工だとさげすまれている妻だけれども、愛しているんだよ。愛しているんだよ」
 ヒゲ高島さん、愛の言葉なんて繰り返さなくていいんですけど。
「長い時間かけて折半してきたのに、加盟をとりやめにされてしまったときですね。さすがに落ち込みますし、何がいけなかったのか反省します」
 うん、加納さんはまとも。
「あまり辛いって意識はありません。人生何でも楽しんじまえって考えてるもんで」

 ピロロ〜。
 岸部似の田中さんが突然ストップウォッチをポッケから取り出した。
「あ、時間切れですね。答えをまとめてください」
 いつの間に時間はかってたんだ、この人。

 まあ、いい。あたしの答えは決まっているわ。
「加納孝さんです」

 しばしの沈黙。

「イヤ〜残念。正解は私です」
 はははと笑いながら、ヒゲ高島が手を上げた。
 あ、あんたかよ。
「というわけで、児島さん。残念ながらご縁がなかったということでお別れです」
 ヒゲ高島が手を打ち鳴らした。

 ばんっ!!

 あたしはイスごと後ろに吹っ飛ばされて、面接室を追い出された。
 その上。
 イスは、窓ガラスをもつきやぶって、私の体ごと外に飛び出した。
 え、ここって……、
 三十二階だっつーーの!!

 超面接恐るべし!

 ベシャ。



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